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【天空率】フェンスや塀は計算に含める?法的根拠と実務上の取り扱いを徹底解説


目次[非表示]

  1. 1.はじめに:天空率計算と「フェンス」、見落としがちなその関係性
    1. 1.1. 天空率計算の基本:対象はあくまで「建築物」
    2. 1.2. なぜ「天空率 フェンス」の扱いが問題になるのか?
  2. 2.フェンスは天空率計算の対象か?法的な位置づけを理解する
    1. 2.1. 建築基準法における「建築物」と「塀(フェンス)」の定義
    2. 2.2. 天空率計算の対象となる「計画建築物」「適合建築物」の範囲
    3. 2.3. 原則としてフェンスは天空率計算の直接的な対象外となる理由
  3. 3.天空率計算におけるフェンスの具体的な取り扱いと注意点
    1. 3.1. 測定点からの視線を遮る障害物としてのフェンスの考慮
    2. 3.2. 透過性のあるフェンス(メッシュ、ルーバー等)の扱いは変わるのか?
    3. 3.3. 特に注意すべきケース:高さのある塀や特殊な構造のフェンス
  4. 4.「天空率 フェンス」に関する実務上のポイントとQ&A
    1. 4.1. 確認申請や行政協議におけるフェンスの一般的な取り扱い
    2. 4.2. 天空率以外の法規制(建ぺい率、壁面後退など)とフェンスの関係
    3. 4.3. よくある質問:「フェンスを設置すると天空率に不利になりますか?」
  5. 5.まとめ:「天空率 フェンス」の正しい理解で適切な外構計画を
    1. 5.1. フェンスと天空率計算に関する重要ポイントの再確認
    2. 5.2. 迷ったら専門家・行政への確認を

1.はじめに:天空率計算と「フェンス」、見落としがちなその関係性

建築物の高さ制限を緩和する強力な手法として、設計実務に不可欠な「天空率」制度。その計算は、敷地と計画する「建築物」の3次元的な関係性に基づいて行われます。

しかし、ここで一つの疑問が浮かびます。敷地境界に設置されるフェンスや塀は、この天空率計算においてどのように扱われるのでしょうか。「天空率 フェンス」というキーワードは、この細部でありながら、時に設計者の頭を悩ませる問題に光を当てるものです。


1.1. 天空率計算の基本:対象はあくまで「建築物」


天空率制度は、建築基準法第56条第7項に基づき、斜線制限(道路斜線、隣地斜線、北側斜線)の対象となる「建築物」に対する緩和規定です。その適否は、計画建築物の天空率と、従来の斜線制限に適合する仮想の建物(適合建築物)の天空率を比較することで判定されます。

この計算の対象は、あくまで「建築物」本体です。フェンスや塀は、建築物に附属するものとして法的に位置づけられることがありますが、天空率計算の主役である建築物本体の形態評価とは、少し異なる次元で考える必要があります。


1.2. なぜ「天空率 フェンス」の扱いが問題になるのか?


「天空率 フェンス」の扱いが問題となるのは、フェンスが天空率を測定する際の「視線」を物理的に遮る可能性があるためです。

天空率は、敷地周囲に設定された測定点から空を見上げたときの開放感を評価するものです。もし、測定点と建築物との間にフェンスがあれば、そのフェンスが視線を遮り、空の見え方に影響を与えるのではないか、という疑問が生じます。

また、フェンスの高さや構造によっては、工作物として法的な扱いが変わることもあり、天空率計算に含めるべきか否かの判断が求められます。この記事では、これらの疑問に答え、フェンスや塀を含む外構計画と天空率計算を適切に進めるための知識を解説していきます。


2.フェンスは天空率計算の対象か?法的な位置づけを理解する


「天空率 フェンス」の議論の核心は、フェンスが天空率計算の対象となる「計画建築物」や「適合建築物」の3Dモデルに含めるべきものなのか、という点にあります。その答えは、建築基準法における「建築物」と「塀(フェンス)」の定義から紐解くことができます。


2.1. 建築基準法における「建築物」と「塀(フェンス)」の定義


建築基準法第2条第一号では、「建築物」を「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの…」と定義し、続けて「これに附属する門若しくは塀」も建築物に含まれるとしています。フェンスは、この「塀」の一種と解釈できます。

つまり、法文上は、フェンスも広義には建築物の一部ということになります。しかし、これが直ちに天空率計算の対象モデルに含めるべき、ということにはなりません。天空率が緩和しようとしているのは、あくまで建築物本体の高さに関する斜線制限だからです。


2.2. 天空率計算の対象となる「計画建築物」「適合建築物」の範囲


天空率計算で比較される「計画建築物」と「適合建築物」は、斜線制限の適用を受ける建築物本体のボリュームを指します。斜線制限は、建築物の特定の部分が一定の斜線の内側に収まることを求める規制であり、一般的な高さ(例:2m程度)の塀やフェンスは、通常、斜線制限の直接的な規制対象とはなりません。

このことから、天空率計算の実務においては、比較対象となる「計画建築物」および「適合建築物」の3Dモデルには、原則として建築物本体のみを含み、敷地境界に設置される一般的な高さのフェンスや塀は含めずに計算を行うのが一般的です。


2.3. 原則としてフェンスは天空率計算の直接的な対象外となる理由


フェンスが天空率計算の直接的な対象外となる主な理由は、天空率制度の趣旨にあります。天空率は、従来の画一的な斜線制限に代わり、同等以上の開放感を確保すれば、より自由な形態の「建築物」を許容しようとするものです。その評価対象は、斜線制限が本来規制しようとしていた建築物本体のボリュームです。

一般的なフェンスや塀は、この建築物本体のボリュームとは別に考えられる外構要素であり、斜線制限の緩和を検討する上で、これらを計算モデルに含めると、制度の本来の趣旨から外れ、不合理な結果を招く可能性があります。したがって、実務上も行政の運用上も、これらは計算対象から除外して考えるのが通例となっています。


3.天空率計算におけるフェンスの具体的な取り扱いと注意点


原則として天空率計算の3Dモデルに含めないとはいえ、「天空率 フェンス」の関係性において、全く考慮しなくて良いわけではありません。いくつかの注意すべき点が存在します。


3.1. 測定点からの視線を遮る障害物としてのフェンスの考慮


天空率を測定する測定点は、道路上や隣地側に設定されます。この測定点から計画建築物を見る際に、敷地境界上のフェンスが視線を遮ることは物理的にあり得ます。

しかし、天空率計算ソフトの多くは、計算対象として指定された建築物モデル(計画建築物・適合建築物)のみを解析の対象とし、それ以外の障害物(例えば、敷地内の樹木や、隣地の既存建築物、そしてフェンスなど)は計算上考慮しない(存在しないものとして扱う)のが一般的です。

これは、天空率が純粋に「計画建築物」と「適合建築物」という二つのボリュームの比較によって適法性を判断する制度であるためです。したがって、通常はフェンスが視線を遮る影響は計算上考慮されません。


3.2. 透過性のあるフェンス(メッシュ、ルーバー等)の扱いは変わるのか?


メッシュフェンスやルーバーフェンスのように、物理的に向こう側が透けて見えるフェンスの場合、その扱いはどうなるのでしょうか。仮にフェンスを天空率計算に含めるという特殊なケースを想定したとしても、日影規制におけるガラス手摺の扱いと同様に、天空率計算においても材質の透過性は原則として考慮されません。

計算は、その部材が持つ外形寸法(最大の厚みや幅)で囲まれた不透明な立体として扱われるのが基本です。したがって、フェンスがメッシュタイプであっても、計算上の扱いはコンクリートブロック塀などと変わらないと考えるのが一般的です。ただし、前述の通り、そもそもフェンス自体を計算モデルに含めることが稀であるため、この点が実務で問題になることは少ないでしょう。


3.3. 特に注意すべきケース:高さのある塀や特殊な構造のフェンス


一般的な高さ(2m程度まで)のフェンスや塀は計算対象外とされるのが通例ですが、注意が必要なケースもあります。例えば、高さが2mを超えるコンクリートブロック塀や組積造の塀などは、建築基準法上の工作物として確認申請が必要になる場合があります(建築基準法施行令第138条)。

また、建築物と一体化したデザインの塀や、非常に高さのある目隠しフェンスなど、その存在が建築物本体の形態と不可分と見なされるような特殊なケースでは、特定行政庁から天空率計算モデルに含めるよう指導される可能性もゼロではありません。

このような特殊なフェンスや塀を計画する場合は、それが天空率計算上どのように扱われるべきか、計画の初期段階で特定行政庁に確認することが賢明です。


4.「天空率 フェンス」に関する実務上のポイントとQ&A


「天空率 フェンス」の取り扱いについて、設計や確認申請といった実務上の観点から、さらにポイントを掘り下げていきます。


4.1. 確認申請や行政協議におけるフェンスの一般的な取り扱い


建築確認申請時に天空率計算書を提出する際、その計算モデルにフェンスを含めるか否かは、設計者の判断と責任において行われます。前述の通り、一般的なフェンスは含めないのが通例であり、それで審査上問題となることはほとんどありません。

しかし、もし計画するフェンスが非常に高い、あるいは特殊な構造を持つなど、判断に迷う場合は、事前に確認検査機関や特定行政庁の担当者に相談し、その取り扱いについて見解を確認しておくことが最も安全です。行政協議の場で、「この計画におけるフェンスは、天空率計算に影響を与えないものとして考えてよいか」と確認し、議事録などに記録を残しておくことで、後のトラブルを防ぐことができます。


4.2. 天空率以外の法規制(建ぺい率、壁面後退など)とフェンスの関係


フェンスの計画においては、天空率だけでなく、他の法規制との関連も考慮する必要があります。
建ぺい率:塀やフェンスは、原則として建築面積に含まれないため、建ぺい率の計算には影響しません。ただし、屋根のある門などが一体となっている場合は、その部分が建築面積に算入されることがあります。

  • 壁面後退(外壁後退): 地区計画や建築協定などで壁面の後退距離が定められている場合、その規定は建築物の壁面に適用されるものであり、フェンスや塀は後退線の外側(道路側や隣地側)に設置できるのが一般的です。ただし、これも地域ごとのルールを確認する必要があります。
  • 高さ制限: 自治体によっては、景観条例などでフェンスや塀の高さに上限を設けている場合があります。

このように、外構計画は様々な法規制と関連するため、総合的なチェックが必要です。


4.3. よくある質問:「フェンスを設置すると天空率に不利になりますか?」


この質問に対する直接的な答えは、「原則として、一般的なフェンスの設置が天空率計算の結果に不利な影響を与えることはありません」となります。その理由は、これまで解説してきた通り、天空率計算は建築物本体を対象とし、敷地境界に設置される一般的なフェンスは計算モデルに含めないのが実務上の通例だからです。

ソフトウェアも通常はそのように設定されています。ただし、これはあくまで一般的なケースです。高さが非常に高い、建築物と一体と見なされるような特殊なデザインである、といった例外的な状況では、行政の判断で計算に含めるよう指導される可能性もゼロではありません。不安な場合は、必ず専門家や行政に確認しましょう。


5.まとめ:「天空率 フェンス」の正しい理解で適切な外構計画を


「天空率 フェンス」の関係性は、一見すると複雑に思えるかもしれませんが、その基本原則は「天空率計算の対象は建築物本体であり、一般的なフェンスは含まない」という点に集約されます。この原則を理解することが、適切な外構計画と天空率の活用に繋がります。


5.1. フェンスと天空率計算に関する重要ポイントの再確認


本記事で解説した「天空率 フェンス」に関する重要なポイントを再確認しましょう。

  • 原則対象外: 天空率計算における「計画建築物」「適合建築物」の3Dモデルには、通常、敷地境界の一般的なフェンスや塀は含めません。
  • 法的根拠: 天空率は建築物本体の高さ制限(斜線制限)を緩和する制度であり、評価対象が建築物本体であるためです。
  • 透過性は無関係: 仮に計算に含める場合でも、メッシュフェンスなどの透過性は原則として考慮されません。
  • 例外的なケース: 非常に高い塀や建築物と一体の特殊なフェンスは、行政から指導が入る可能性も考慮し、事前確認が推奨されます。
  • 他の法規との関連: 天空率だけでなく、建ぺい率や壁面後退、景観条例など、外構計画に関連する他の法規も遵守する必要があります。


5.2. 迷ったら専門家・行政への確認を


建築基準法の解釈や運用は、時に専門家でも判断に迷うことがあります。特に、フェンスのような建築物本体と外構との境界領域にある要素の取り扱いについては、特定行政庁の判断や指導が最終的な決定打となることも少なくありません。

したがって、計画するフェンスの仕様が特殊であったり、天空率の計算結果が非常に厳しく、わずかな要素が適否に影響を与えたりするような状況では、自己判断せずに、必ず建築士を通じて特定行政庁に事前相談を行うようにしてください。正確な情報に基づき、適切なプロセスを踏むことが、スムーズで安心な建築計画を実現する最も確実な方法です。

つくるAI株式会社 編集部
つくるAI株式会社 編集部
2024年7月、トグルホールディングス株式会社より分社化した「つくるAI株式会社」のメディア編集部。デベロッパー様が土地をもっと買えるようになり、売買仲介様の物件の価値の判断がより正確になるツールを提供しています。

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