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【天空率】「入隅」設計で高さ制限をクリア!効果的な活用法と注意点を徹底解説


目次[非表示]

  1. 1.はじめに:「天空率 入隅」設計が拓く建築計画の新たな可能性
    1. 1.1. 天空率計算の基本と、建物形状の工夫の重要性
    2. 1.2. なぜ「入隅」が天空率計算の鍵となるのか?
  2. 2.「入隅」が天空率に与える影響のメカニズム
    1. 2.1. 入隅の基本的な定義と設計上の役割
    2. 2.2. ポジティブな影響:建物ボリュームの削減と空の見え方の改善
    3. 2.3. 注意すべき点:別の測定点への新たな影響とトレードオフ
    4. 2.4. 「入隅」と「出隅」の天空率への影響比較
  3. 3.天空率を向上させるための効果的な「入隅」設計戦略
    1. 3.1. 道路斜線制限に対する入隅の活用法と効果
    2. 3.2. 隣地斜線・北側斜線制限に対する入隅の活用法と効果
    3. 3.3. 雁行設計と天空率:入隅と出隅の組み合わせによる最適化
  4. 4.「天空率 入隅」設計における実務上のポイントとシミュレーション
    1. 4.1. 最適な入隅の深さ・幅・位置を見つけるための検討プロセス
    2. 4.2. 3Dシミュレーションソフトを用いた効果の可視化と定量的検証
    3. 4.3. セットバックなど他の設計手法との組み合わせによる相乗効果
  5. 5.まとめ:「天空率 入隅」をマスターし、設計の自由度を高める
    1. 5.1. 入隅設計による天空率改善の重要ポイント再確認
    2. 5.2. 戦略的な形態デザインと専門家の知見の重要性

1.はじめに:「天空率 入隅」設計が拓く建築計画の新たな可能性


建築設計において、天空率制度は高さ制限を緩和し、設計の自由度を飛躍的に高める強力なツールです。この天空率をクリアするためには、建物の配置や高さを調整するだけでなく、建物自体の「形状」を戦略的にデザインすることが極めて重要になります。

その中でも、建物の壁面を内側に凹ませる「入隅(いりすみ)」の設計は、天空率計算に有利な状況を作り出すための効果的なテクニックとして知られています。「天空率 入隅」の関係性を深く理解することは、建築可能なボリュームを最大化し、より創造的な建築を実現するための鍵となります。


1.1. 天空率計算の基本と、建物形状の工夫の重要性


天空率制度は、計画建築物から見える空の広さ(天空率)が、従来の斜線制限に適合する仮想の建物(適合建築物)の天空率以上であれば、斜線制限が適用除外となる仕組みです。この比較において、計画建築物の天空率をいかにして高めるか、あるいは比較対象となる適合建築物の天空率をいかにして下げるかが、設計上の大きなテーマとなります。

建物をセットバックさせる(境界線から後退させる)手法は広く知られていますが、それだけではなく、建物の平面形状、特に凹凸をどうデザインするかが、天空率の数値を大きく左右します。ここで注目されるのが「入隅」という設計要素です。


1.2. なぜ「入隅」が天空率計算の鍵となるのか?


「入隅」とは、建物の平面計画において、壁面が内側に折れ曲がってできる凹んだ角の部分を指します。この凹んだ部分、つまり建物ボリュームが「引かれている」部分が、天空率の測定点から空を見上げたときの視界を広げる効果を持ちます。

建物のボリュームをただ削るだけでなく、どの位置に、どの程度の深さで入隅を設けるかを戦略的に計画することで、天空率計算を有利に進めることが可能になります。

「天空率 入隅」の設計は、単なる意匠的な操作に留まらず、法規をクリアし、敷地のポテンシャルを最大限に引き出すための高度な設計技術なのです。この記事では、その具体的なメカニズム、効果的な活用法、そして実務上の注意点を詳しく解説していきます。

2.「入隅」が天空率に与える影響のメカニズム


「天空率 入隅」設計の効果を最大限に引き出すためには、まず入隅という形状が、なぜ、どのように天空率の数値に影響を与えるのか、そのメカニズムを理解することが不可欠です。


2.1. 入隅の基本的な定義と設計上の役割


建築における「入隅」とは、二つの壁面が内側に向かって交差する部分、つまり建物の角が内側に凹んでいる部分を指します。これに対し、外側に突き出た角は「出隅(ですみ)」と呼ばれます。 設計上、入隅は単に外観に変化を与えるだけでなく、採光や通風の確保、プライバシーの向上、あるいは外部空間との繋がりを生み出すなど、多様な役割を果たします。そして、高さ制限の文脈、特に天空率計算においては、この「凹み」が空を見通すための重要な空間として機能します。


2.2. ポジティブな影響:建物ボリュームの削減と空の見え方の改善


入隅が天空率計算に与える最も大きなポジティブな影響は、その部分の建物ボリュームが存在しないことにより、特定の測定点からの空の見え方が改善される(=計画建築物の天空率が向上する)点です。 天空率は、測定点から天空を見上げたときの、建物によって遮られない空の割合です。入隅を設けることは、その部分の建物を取り除き、空が見える範囲を広げる行為に他なりません。

特に、天空率の計算結果が厳しい測定点(クリアランスが小さい測定点)から見える位置に効果的に入隅を計画することで、その測定点の天空率をピンポイントで改善し、基準値をクリアさせることが可能になります。


2.3. 注意すべき点:別の測定点への新たな影響とトレードオフ


一方で、「天空率 入隅」の設計には注意すべき点もあります。入隅を設けることで新たに生まれる壁面が、これまで影響のなかった別の測定点からの視線を遮る新たな障害物となってしまう可能性があるのです。

例えば、敷地の北東角に入隅を設けた場合、敷地の北西側にある測定点からの天空率は改善されるかもしれませんが、入隅によって新たにできた西向きの壁面が、敷地の南東側にある測定点からの空を遮り、そちらの天空率を悪化させてしまう、というトレードオフの関係が生じることがあります。

したがって、入隅を計画する際には、一つの視点だけでなく、全ての測定点への影響を総合的に評価する必要があります。


2.4. 「入隅」と「出隅」の天空率への影響比較


入隅と対照的な形状である「出隅」(建物の角が外側に突き出た部分)は、天空率計算において不利に働くことがほとんどです。出隅は、その突出したボリュームが複数の方向の測定点からの視線を遮るため、天空率を低下させる大きな要因となります。

このことから、天空率をクリアするための基本的な設計戦略は、「出隅」を減らし、「入隅」を増やすことであると言えます。建物の平面形状を、単純な四角形から、凹凸のある複雑な形状(例えば、L字型、コの字型、十字型など)にすることで、出隅による天空率の低下を抑えつつ、入隅による天空率の向上効果を狙うことができます。


3.天空率を向上させるための効果的な「入隅」設計戦略


「天空率 入隅」のメカニズムを理解した上で、ここでは各種斜線制限に対して、どのように入隅設計を活用すれば効果的か、その戦略について解説します。


3.1. 道路斜線制限に対する入隅の活用法と効果


道路斜線制限に対する天空率計算では、測定点は主に前面道路の中心線上などに配置されます。この場合、道路に面する壁面に入隅を設けることが、天空率の向上に直接的に繋がります。例えば、建物のファサード(正面)の中央部分を凹ませて入隅とすることで、道路の正面に立つ測定点からの空の見え方が大きく改善されます。

この手法は、建物の圧迫感を軽減し、街並みに奥行きと変化を与えるデザイン的な効果も生み出します。また、入隅部分を建物のエントランスアプローチや、店舗のテラス席などとして活用することも可能です。建物のボリュームを確保しつつ、道路側の天空率をクリアするための有効な戦略と言えるでしょう。


3.2. 隣地斜線・北側斜線制限に対する入隅の活用法と効果


隣地斜線制限や北側斜線制限では、測定点は隣地境界線側に設定されます。これらの規制に対しては、隣地境界線に面する壁面に入隅を設けることが効果的です。特に、敷地境界線に近い部分で斜線制限が厳しくなるケースにおいて、その部分の壁面を後退させて入隅とすることで、近接する測定点からの天空率を改善できます。

例えば、建物の隅部が斜線制限に抵触しそうな場合に、そのコーナー部分をカットするように入隅を設けることで、規制をクリアできる可能性が高まります。この手法は、建物のボリュームロスを最小限に抑えながら、ピンポイントで天空率の厳しい箇所を対策するのに有効です。


3.3. 雁行設計と天空率:入隅と出隅の組み合わせによる最適化


雁行(がんこう)設計とは、建物の壁面をギザギザにずらして配置する設計手法です。この設計は、多数の「入隅」と「出隅」を意図的に作り出すことになり、「天空率 入隅」の考え方を応用した高度なテクニックと言えます。雁行設計を用いることで、各住戸の独立性や採光・通風条件を向上させるといったメリットがありますが、天空率の観点からも非常に有効です。

壁面を分節化し、凹凸を持たせることで、一つの大きな壁面が空を遮る状況を避け、測定点からの視線が抜ける箇所を増やすことができます。入隅による天空率向上効果と、出隅による低下効果のバランスを3Dシミュレーションで精密にコントロールすることで、敷地全体として天空率を最大化する最適な建物形状を見つけ出すことが可能になります。

4.「天空率 入隅」設計における実務上のポイントとシミュレーション


「天空率 入隅」の設計を成功させるためには、コンセプトだけでなく、具体的な数値を伴った実務上の検討が不可欠です。ここでは、そのための重要なポイントを解説します。


4.1. 最適な入隅の深さ・幅・位置を見つけるための検討プロセス


入隅の効果は、その深さ、幅、そして設ける位置によって大きく変わります。闇雲に入隅を設けても、期待した効果が得られないばかりか、逆に別の測定点で不利になったり、内部のプランニングに支障をきたしたりすることもあります。

最適な入隅計画のためには、まず天空率計算を行い、最も条件の厳しい(クリアランスの小さい)測定点を特定します。次に、その測定点からの視線を最も遮っている建物の部分を分析し、その箇所にピンポイントで入隅を設けることを検討します。そして、入隅の深さや幅を少しずつ変えながら、シミュレーションを繰り返し、クリアランスが最も効率的に向上する寸法と位置を見つけ出します。この試行錯誤のプロセスが、効果的な入隅設計の鍵となります。


4.2. 3Dシミュレーションソフトを用いた効果の可視化と定量的検証


現代の天空率設計において、3Dシミュレーションソフトの活用は必須です。これらのソフトウェアを用いることで、「天空率 入隅」の効果を数値(天空率やクリアランス)で定量的に検証できるだけでなく、天空図などのグラフィカルな表示によって視覚的に確認することができます。

例えば、入隅を設ける前と後での天空図を比較すれば、どれだけ空の見える範囲が広がったかが一目瞭然です。また、全ての測定点への影響を一覧で確認できるため、ある測定点での改善が他の測定点に悪影響を及ぼしていないか、といったトレードオフの関係も容易に把握できます。このような可視化と定量的検証を通じて、設計者は客観的なデータに基づいた合理的な設計判断を下すことができます。


4.3. セットバックなど他の設計手法との組み合わせによる相乗効果


入隅設計は、他の設計手法、特に「セットバック(壁面後退)」と組み合わせることで、さらなる相乗効果を生み出すことがあります。例えば、建物全体を大きくセットバックさせて基本的な天空率を確保しつつ、それでもなおクリアが難しい部分に対して、補助的に入隅を設けるといったアプローチが考えられます。

また、低層部ではセットバックさせて開放感を確保し、上層部では入隅を多用して天空率を稼ぎながらボリュームを確保する、といった立体的な組み合わせも有効です。入隅、出隅、セットバックといった複数の設計要素をパズルのように組み合わせ、天空率を最適化していくことが、高度な建築設計には求められます。

5.まとめ:「天空率 入隅」をマスターし、設計の自由度を高める

「天空率 入隅」設計は、単なる意匠的なテクニックではなく、天空率という法規をクリアし、建築可能なボリュームと設計の自由度を最大化するための極めて有効な戦略です。そのメカニズムと活用法を正しく理解することが、設計の可能性を大きく広げます。

5.1. 入隅設計による天空率改善の重要ポイント再確認


本記事で解説した「天空率 入隅」設計の重要なポイントを再確認しましょう。

  • 基本効果: 入隅は、建物ボリュームを凹ませることで、測定点からの空の見え方を改善し、計画建築物の天空率を向上させる。
  • トレードオフへの注意: ある測定点での改善が、別の測定点での悪化に繋がる可能性があるため、総合的な評価が必要。
  • 戦略的活用: 道路斜線、隣地斜線など、対象となる規制に応じて効果的な位置に入隅を計画する。雁行設計はその応用形。
  • シミュレーション必須: 最適な形状、寸法、位置を見つけるためには、3Dシミュレーションによる定量的・視覚的な検証が不可欠。
  • 他の手法との組み合わせ: セットバックなど、他の設計手法と組み合わせることで相乗効果が期待できる。

これらのポイントを押さえることが、入隅設計を成功させるための鍵です。


5.2. 戦略的な形態デザインと専門家の知見の重要性


天空率制度は、設計者に「性能」を満たすための自由な形態デザインを許容します。「入隅」の活用は、まさにその自由度を最大限に活かすための戦略的な形態デザインの一例です。しかし、その検討は非常に専門的で複雑です。天空率の計算原理、建築基準法の深い理解、そして3Dシミュレーションソフトを駆使する技術が求められます。

したがって、このような高度な設計アプローチを検討する際には、必ず天空率計算に精通した建築士などの専門家に相談することが重要です。専門家は、豊富な知識と経験に基づき、法規をクリアしつつ、デザイン性や事業性も満たす最適な建築計画を提案してくれます。

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