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日影規制の「範囲」を徹底解説!5m/10mラインと測定水平面のすべて


目次[非表示]

  1. 1.日影規制における「範囲」とは?基本的な考え方
    1. 1.1. 日影規制の目的と「範囲」の重要性
    2. 1.2. 水平方向の範囲:規制ライン(5m/10m)
    3. 1.3. 垂直方向の範囲:測定水平面の高さ
  2. 2.水平方向の規制範囲:5mラインと10mラインの詳細
    1. 2.1. なぜ2段階の規制ラインがあるのか?
    2. 2.2. 5mを超え10m以内の範囲の規制内容
    3. 2.3. 10mを超える範囲の規制内容
    4. 2.4. 用途地域による規制時間の違い
  3. 3.垂直方向の規制範囲:測定水平面の高さの基準
    1. 3.1. 測定水平面の高さとは?
    2. 3.2. 用途地域別の測定水平面の高さ(1.5m, 4m, 6.5m)
    3. 3.3. 敷地に高低差がある場合の測定水平面の考え方
  4. 4.日影規制の範囲を理解する上での注意点
    1. 4.1. 地方公共団体の条例による「範囲」の違い
    2. 4.2. 緩和規定と「範囲」の適用
    3. 4.3. 日影図を用いた「範囲」の確認方法
  5. 5.まとめ

建物を建築する際、周辺環境への日照を確保するために設けられている「日影規制」。この規制を理解する上で非常に重要なのが、規制が影響を及ぼす「範囲」です。具体的には、自分の敷地のどのあたりまで、どの高さで日影を考慮しなければならないのか、という問題です。

この「範囲」を正確に把握していないと、建築計画が根底から覆る可能性もあります。この記事では、「日影規制 範囲」というキーワードに焦点を当て、日影規制が適用される水平的な範囲(規制ライン)と垂直的な範囲(測定水平面の高さ)について、建築関係者、不動産関係者、そして土地所有者の皆様に向けて、その詳細と根拠、注意点を分かりやすく解説します。


1.日影規制における「範囲」とは?基本的な考え方


まず、日影規制において「範囲」という言葉が何を指しているのか、その基本的な概念を整理しましょう。日影規制の「範囲」は、大きく分けて「水平方向の範囲」と「垂直方向の範囲」の2つの側面から考えることができます。


1.1. 日影規制の目的と「範囲」の重要性


日影規制の主な目的は、建物が密集する地域においても、人々が生活する上で最低限必要な日照時間を確保することです。この目的を達成するために、建築基準法では、建物が一定時間以上、周辺の敷地に影を落とさないように、その高さや配置に制限を設けています。


このとき、「どの範囲の」「どの高さで」日影の影響を評価するのかという基準が明確でなければ、規制の実効性が保てません。そのため、日影規制では、日影の影響を評価する水平的なライン(規制ライン)と、評価する高さ(測定水平面)が具体的に定められています。これらの「範囲」を正しく理解することが、日影規制を遵守した建築計画の第一歩となるのです。


1.2. 水平方向の範囲:規制ライン(5m/10m)


日影規制が適用される水平方向の範囲は、一般的に敷地境界線からの距離で示されます。具体的には、自分の敷地境界線から、隣地側に向かって一定の距離にあるライン(規制ライン)を基準に、そのライン上で許容される日影時間が定められています。


この規制ラインは、通常、以下の2段階で設定されています。

  • 敷地境界線から5mを超え10m以内の範囲
  • 敷地境界線から10mを超える範囲

これらの範囲ごとに、異なる日影時間が適用されるのが一般的です。つまり、自分の建物がこれらの範囲に落とす日影の時間が、それぞれ定められた許容時間内に収まるように計画する必要があります。


1.3. 垂直方向の範囲:測定水平面の高さ


一方、日影規制が適用される垂直方向の範囲は、「測定水平面」の高さで示されます。これは、日影の影響を測定・評価する基準となる、地面からの特定の高さを指します。


建物が高くなればなるほど、遠くまで影を落としますが、その影が実際に人々の生活空間にどの程度影響を与えるかは、影が落ちる地面からの高さによって異なります。例えば、1階の窓への日照と、屋根への日照では、重要度が異なると考えられます。そのため、日影規制では、用途地域に応じて、合理的な高さに測定水平面を設定しています。


2.水平方向の規制範囲:5mラインと10mラインの詳細


日影規制の水平的な範囲を定める5mラインと10mラインについて、もう少し詳しく見ていきましょう。これらのラインは、日影図を作成し、規制をクリアしているかを確認する際の重要な基準となります。


2.1. なぜ2段階の規制ラインがあるのか?


規制ラインが敷地境界線から5mと10mの2段階で設定されているのは、隣地への影響度合いに応じてきめ細かく規制をかけるためです。


敷地境界線に近い範囲(5m~10m):この範囲は、隣接する建物の居住空間に直接的な影響を与えやすいため、比較的厳しい日影時間が設定されます。隣地の庭や1階の窓などへの日照をより手厚く保護する意図があります。


敷地境界線から遠い範囲(10m超):この範囲は、隣地への直接的な圧迫感がやや薄れるため、5m~10mの範囲よりも緩やかな日影時間が設定されるのが一般的です。
このように段階を設けることで、隣地の日照環境を守りつつ、ある程度の建築の自由度も確保するというバランスを図っています。


2.2. 5mを超え10m以内の範囲の規制内容


敷地境界線から5mを超え10m以内の範囲は、隣地の日照確保において特に重要なエリアと位置付けられています。この範囲に建物の影が落ちる場合、その影が連続してとどまる時間(受影時間)が、地方公共団体の条例で定められた許容時間を超えてはなりません。


例えば、ある用途地域で、この範囲の許容時間が「5時間」と定められていれば、冬至日の午前8時から午後4時(または午前9時から午後3時)までの間に、この範囲内のどの地点においても、5時間を超えて日影になってはいけない、ということになります。


2.3. 10mを超える範囲の規制内容


敷地境界線から10mを超える範囲についても同様に、条例で定められた許容時間を超える日影を生じさせてはなりません。この範囲の許容時間は、通常、5m~10mの範囲の許容時間よりも緩やか(長い時間)に設定されます。


例えば、5m~10mの範囲で5時間規制の場合、10mを超える範囲では3時間規制といった具合です。これにより、建物がある程度の高さを持つ場合でも、敷地境界線から離れた部分では比較的自由な設計が可能になります。


2.4. 用途地域による規制時間の違い


これらの規制ライン(5m/10m)ごとに適用される具体的な許容日影時間は、建築基準法施行令第135条の12第1項第一号の表に示された時間(例えば、(い)欄5時間・3時間、(ろ)欄4時間・2.5時間など)の組み合わせの中から、地方公共団体が条例で選択し、指定します。


そして、どの時間の組み合わせが選択されるかは、その土地の用途地域の種類によって異なります。一般的に、低層住居専用地域のような居住環境を重視する地域ほど厳しい(許容時間が短い)規制時間が適用され、商業地域に近い用途地域などでは比較的緩やかな規制時間が適用される傾向にあります。したがって、計画地の用途地域と、それに対応する条例での指定内容を確認することが不可欠です。


3.垂直方向の規制範囲:測定水平面の高さの基準


次に、日影規制の垂直的な範囲を定める「測定水平面」の高さについて解説します。これは、日影の影響をどの高さで評価するかの基準です。


3.1. 測定水平面の高さとは?


測定水平面とは、日影規制の計算において、建物が落とす影の時間を測定する基準となる仮想の水平面のことです。この測定水平面上で、前述の規制ライン(5m/10m)ごとに定められた許容時間を超える影が生じないように、建物の高さや配置を計画する必要があります。


この測定水平面の高さは、平均地盤面からの高さで規定されます。平均地盤面とは、建物を建てる敷地の平均的な高さを示すもので、その算定方法は建築基準法施行令第2条第2項で定められています。


3.2. 用途地域別の測定水平面の高さ(1.5m, 4m, 6.5m)


測定水平面の具体的な高さは、建築基準法施行令第135条の12第1項第二号により、対象となる区域の区分(用途地域など)に応じて、以下の3つの高さの中から地方公共団体が条例で指定することとされています。

  • 平均地盤面からの高さ1.5m:主に第一種・第二種低層住居専用地域など、低層住宅の居住環境を重視する地域で採用されます。これは、1階の窓からの日照を想定した高さです。
  • 平均地盤面からの高さ4m:主に第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、準住居地域などで採用されます。これは、一般的な住宅の2階程度の高さや、バルコニーなどへの日照を考慮したものです。
  • 平均地盤面からの高さ6.5m:主に近隣商業地域や準工業地域などで採用されることがある高さです。比較的高層の建物も許容される地域で、より高い位置での日照が考慮されます。


計画地の用途地域に応じて、条例でどの高さが指定されているかを確認する必要があります。


3.3. 敷地に高低差がある場合の測定水平面の考え方


敷地内や隣接地との間に高低差がある場合、平均地盤面の算定や測定水平面の扱いに注意が必要です。

  • 敷地内の高低差:敷地内の高低差が3mを超える場合は、3m以内ごとの部分に分割してそれぞれの平均地盤面を算定するなど、特別なルールが適用されます。
  • 隣地との高低差:隣地盤面が自分の敷地の地盤面より1m以上低い場合は、その隣地地盤面は自分の敷地の地盤面より1m低い位置にあるものとみなして日影計算を行う、といった緩和措置があります。これは、低い土地の日照が不利にならないようにするための配慮です。


高低差のある土地での日影規制の適用は複雑になるため、専門家への相談や特定行政庁への確認が推奨されます。


4.日影規制の範囲を理解する上での注意点


日影規制の「範囲」を正しく理解し、適切に対応するためには、いくつかの注意点があります。


4.1. 地方公共団体の条例による「範囲」の違い


これまで述べてきた規制ラインの許容時間や測定水平面の高さは、建築基準法及び同施行令で定められた選択肢の中から、最終的には各地方公共団体が条例で指定します。そのため、全国一律ではなく、自治体によって適用される「範囲」の具体的な数値が異なる場合があります。


例えば、同じ用途地域であっても、A市とB市では異なる規制時間や測定水平面の高さが採用されている可能性があります。したがって、建築計画地の条例を必ず確認し、その地域独自の規制内容を正確に把握することが最も重要です。


4.2. 緩和規定と「範囲」の適用


日影規制には、一定の条件下で規制が緩和される場合があります。例えば、敷地が幅の広い道路や川、公園などに接している場合や、同一敷地内に複数の建物がある場合などです。これらの緩和規定が適用される場合、規制ラインの考え方や日影時間の算定方法に特例が生じることがあります。
緩和規定の適用可否やその具体的な内容は、個別の案件ごとに詳細な検討と確認が必要です。安易に緩和を期待せず、適用条件を慎重に確認しましょう。


4.3. 日影図を用いた「範囲」の確認方法


日影規制の「範囲」を実際に確認し、計画建物が規制をクリアしているかを検証するためには、「日影図」の作成が不可欠です。日影図には、時刻日影図と等時間日影図があり、特に等時間日影図は規制の適否判断に直接用いられます。


この日影図上で、前述の5mライン、10mラインといった水平的な範囲と、指定された測定水平面での日影時間が、条例で定められた許容時間内に収まっているかを視覚的に確認します。CADソフトなどを用いて正確な日影図を作成し、慎重にチェックすることが求められます。

5.まとめ


「日影規制 範囲」について、水平方向の規制ライン(5m/10m)と垂直方向の測定水平面の高さという2つの側面から詳しく解説しました。日影規制の「範囲」は、①敷地境界線からの距離(5mラインと10mライン)に応じて設定される許容日影時間と、②日影を評価する高さである測定水平面(平均地盤面から1.5m、4m、または6.5m)によって具体的に定義されます。


これらの具体的な数値は、計画地の用途地域と、それに基づいて地方公共団体が定める条例によって決定されます。したがって、日影規制の「範囲」を正確に把握するためには、まず用途地域を確認し、次に対象自治体の条例を詳細に調査することが不可欠です。その上で、日影図を用いて、指定された「範囲」内で規制をクリアしているかを検証する必要があります。この「範囲」の理解が、適法で良好な建築計画の基礎となるでしょう。

つくるAI株式会社 編集部
つくるAI株式会社 編集部
2024年7月、トグルホールディングス株式会社より分社化した「つくるAI株式会社」のメディア編集部。デベロッパー様が土地をもっと買えるようになり、売買仲介様の物件の価値の判断がより正確になるツールを提供しています。

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