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【第二種低層住居専用地域の高さ制限】絶対高さ10m/12mの壁と3階建ての可能性

ゆったりとした敷地に2階建ての家が立ち並び、空が広く感じられる閑静な住宅街。そんな街並みの多くは、「第二種低層住居専用地域」に指定されています。この地域は、良好な住環境を守るため、数ある用途地域の中でも特に厳しい「高さ制限」が設けられているのが最大の特徴です。その中心にあるのが、「絶対高さ制限」という絶対的なルールです。

「この土地には、どれくらいの高さの家が建てられるの?」「夢の3階建ては実現できる?」この記事では、第二種低 '層住居専用地域高さ制限に焦点を当て、その全貌を徹底的に解説します。厳しいルールの意味を理解し、その中で実現できる、理想の家づくりのヒントを探っていきましょう。

1. 「第二種低層住居専用地域」とは?穏やかな住環境の秘密

まず、第二種低層住居専用地域がどのような場所なのか、その基本的な性格から見ていきましょう。

1.1. 低層住宅のための地域:第一種とのわずかな違い

第二種低層住居専用地域は、その名の通り「主として低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域」です。街の景観を揃え、日当たりや風通しの良い、穏やかな住環境を守ることを目的としています。

よく似た「第一種低層住居専用地域」との違いは、建てられる店舗の種類にあります。第一種では住宅兼用の小規模な店舗や事務所などに限定されますが、第二種ではそれに加え、床面積150㎡までの店舗(コンビニエンスストアなど)や飲食店も建築可能です。このため、第一種よりも少しだけ生活の利便性が高いのが特徴と言えます。

1.2. 建てられる建物と規模(建ぺい率・容積率)

この地域の建物の規模は、「建ぺい率」と「容積率」で定められます。

  • 建ぺい率: 敷地面積に対する建築面積の割合で、30%~60%の範囲で指定されます。これにより、敷地内にゆったりとした庭や駐車スペースなどの空地が確保されます。

  • 容積率: 敷地面積に対する延べ面積の割合で、50%~200%の範囲で指定されます。これにより、建物の全体の床面積が制限され、ゆとりのある街並みが保たれます。

これらの数値が低いほど、より広々とした、贅沢な土地利用が求められることになります。

1.3. 高さ制限の全体像:絶対高さ制限が君臨する世界

第二種低層住居専用地域高さ制限を語る上で、最も重要なのが「絶対高さ制限」の存在です。他の多くの地域では、斜線制限や日影規制によって間接的に高さが制限されますが、この地域では、まず「高さ〇mまで」という絶対的な上限が定められています。その上で、さらに他の高さ制限が複合的にかかってくる、というのがこの地域のルールの全体像です。

2. 最重要ルール「絶対高さ制限」を徹底理解する

この地域での建築計画を左右する、絶対的なルール「絶対高さ制限」について詳しく見ていきましょう。

2.1. 建物の高さの上限は「10mまたは12m」

第二種低層住居専用地域では、都市計画によって、建築物の高さが10mまたは12mのいずれかに制限されます。建物のいかなる部分も、この高さを超えて建築することはできません。

この「高さ」とは、地盤面からの高さを指します。10mという高さは、おおよそ一般的な木造2階建て住宅がすっぽり収まる高さです。12mの制限であれば、少しゆとりのある2階建てや、設計によっては3階建ても視野に入ってきます。この絶対的な上限があるからこそ、この地域のスカイラインは低く揃い、圧迫感のない街並みが維持されているのです。

2.2. なぜ絶対的な高さの上限が定められているのか

絶対高さ制限の目的は、低層住宅地の良好な住環境を将来にわたって確実に維持することにあります。もしこのルールがなければ、一部の建物だけが突出して高くなり、街並みの統一感が損なわれたり、近隣の日照やプライバシーが侵害されたりする可能性があります。

「高さ」という最も分かりやすい指標で明確な上限を設けることで、誰にとっても公平なルールとなり、地域全体の資産価値とも言える良好な景観と住環境を守っているのです。これは、この地域に住む、あるいはこれから住もうとする人々にとって、大きな安心材料となります。

2.3. 「10m」と「12m」はどう決まる?都市計画の確認方法

自分の土地が10m制限なのか、12m制限なのかは、非常に重要な問題です。このどちらが適用されるかは、各地方公共団体が定める「都市計画」によって決定されます。

したがって、この地域で土地の購入や建築を検討する際には、必ず役所の都市計画課や建築指導課に問い合わせ、その土地に適用される絶対高さ制限が何メートルなのかを正確に確認する必要があります。「おそらく10mだろう」といった思い込みは禁物です。この2mの違いが、建築計画の可能性を大きく左右します。

3. 絶対高さだけじゃない!複合的にかかるその他の高さ制限

絶対高さ制限をクリアした上で、さらにいくつかの高さ制限をクリアする必要があります。

3.1.【北側斜線制限】北側隣地の日当たりを守る厳しいルール

低層住居専用地域では、「北側斜線制限」が非常に厳しく適用されます。これは、北側隣地の日照を確保するため、建物の北側の高さを制限するルールです。

具体的には、北側の隣地境界線上の地盤面から5mの高さを起点として、そこから1:1.25の勾配で引かれる斜線の中に建物を収めなければなりません。この規制により、建物の北側の屋根が斜めにカットされたような形状になるのが一般的です。絶対高さ制限とこの北側斜線制限の2つが、建物の大まかな形を決定づける主要な要因となります。

3.2.【道路斜線制限】道路の開放感を確保するルール

前面道路の採光や通風を確保するため、「道路斜線制限」も適用されます。道路の反対側の境界線から、1:1.25の勾配で引かれる斜線の中に建物を収める必要があります。道路幅が狭い敷地では、この規制が建物の配置や形状に影響を与えることがあります。建物を道路から後退(セットバック)させることで、制限を緩和することも可能です。

3.3.【日影規制】3階建てなどを計画する場合に要注意

第二種低層住居専用地域でも、日影規制が適用される場合があります。対象となるのは、「軒の高さが7mを超える建築物」または「地階を除く階数が3以上の建築物」です。

絶対高さ制限が10mまたは12mと低いため、一般的な2階建てでは対象外となることが多いですが、例えば絶対高さ12mの地域で3階建てを計画する場合や、軒の高さを7m以上に設定した設計の場合は、日影規制の対象となります。その場合、冬至の日を基準に、厳しい時間制限をクリアする必要が出てくるため、注意が必要です。

3.4. 隣地斜線制限が「適用されない」理由

建築基準法の高さ制限には「隣地斜線制限」もありますが、第二種低層住居専用地域では、この規制は適用されません。なぜなら、隣地斜線制限は、隣地境界線上の高さ20mの地点からスタートする規制であり、絶対高さが10mや12mに定められているこの地域では、そもそもこの規制線が建物に届かないからです。絶対高さ制限が、隣地斜線制限の役割も兼ねている、と考えると分かりやすいでしょう。

4. 第二種低層住居専用地域での建築Q&A

この地域で家を建てる際によくある疑問について、Q&A形式でお答えします。

4.1. Q. 結局、3階建ての家は建てられますか?

  • A. 結論から言うと、「不可能ではないが、非常に難しい」です。絶対高さが12mに指定されている地域であれば、可能性はあります。しかし、12mという高さの中に、3層分の床と天井、屋根を収める必要があり、各階の天井高を通常より低く抑えるなどの工夫が必須です。さらに、厳しい北側斜線制限や、場合によっては日影規制もクリアしなければならず、設計上の制約は極めて大きくなります。コスト面でも割高になる傾向があるため、実現には高度な設計力と十分な予算が必要と言えるでしょう。

4.2. Q. 高さ制限を緩和する方法はありますか?(天空率など)

  • A. はい、あります。「天空率」という制度を活用すれば、北側斜線制限や道路斜線制限を緩和できる可能性があります。これは、規定の斜線に適合する建物と同等以上に空が見えることが証明できれば、斜線制限を適用しないというルールです。これにより、斜線制限のラインを超えた設計が可能になり、例えば屋根の形状の自由度が増すなどのメリットがあります。ただし、絶対高さ制限そのものは緩和されないため、10mまたは12mという上限は必ず守る必要があります。

4.3. Q. 勾配天井や屋根裏部屋も高さに含まれますか?

  • A. はい、含まれます。絶対高さ制限は、建物のいかなる部分も超えてはならないため、屋根の最も高い棟の部分や、煙突、アンテナなどもすべて対象となります。屋根裏収納(小屋裏物置等)については、天井高が1.4m以下で、かつ直下階の床面積の2分の1未満の面積であれば、階数には算入されませんが、その屋根自体の高さは、もちろん絶対高さ制限の対象となります。

5. まとめ

今回は、良好な住環境が魅力の「第二種低層住居専用地域」における「高さ制限」について、その核心である絶対高さ制限を中心に解説しました。

  • 第二種低層住居専用地域は、穏やかな住環境を守るため、絶対高さが10mまたは12mに制限されます。

  • この絶対高さ制限に加え、厳しい北側斜線制限や道路斜線制限が複合的に適用されます。

  • 隣地斜線制限は適用されませんが、軒高7m超または3階建ての建物を計画する際は日影規制に注意が必要です。

  • 3階建ての建築は不可能ではありませんが、多くの制約をクリアする必要があり、設計・コスト両面でハードルが高くなります。

  • 厳しい高さ制限があるからこそ、この地域の価値ある住環境が守られています。

一見すると厳しい制約に思える高さ制限ですが、それはこの地域の快適で安全な暮らしを守るための大切なルールです。これらのルールを正しく理解し、その中で最大限の工夫を凝らすことが、第二種低層住居専用地域における、後悔のない家づくりに繋がるのです。

つくるAI株式会社 編集部
つくるAI株式会社 編集部
2024年7月、トグルホールディングス株式会社より分社化した「つくるAI株式会社」のメディア編集部。デベロッパー様が土地をもっと買えるようになり、売買仲介様の物件の価値の判断がより正確になるツールを提供しています。

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