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日影規制はいつから?基準日・時間・法律の歴史まで専門家が徹底解説


目次[非表示]

  1. 1.日影規制とは?快適な住環境を守るための基本ルール
    1. 1.1. なぜ必要?日影規制の目的と概要
    2. 1.2. すべての建物が対象ではない?規制がかかる地域と建築物
    3. 1.3. 法律としての日影規制はいつから始まった?
  2. 2.日影規制は「いつから」適用されるのか?3つの視点で解説
    1. 2.1. 基準となる日:一年で最も影が長くなる「冬至日」
    2. 2.2. 測定される時間帯:午前8時から午後4時までの間
    3. 2.3. 規制される時間(日影時間):用途地域ごとに定められた許容範囲
  3. 3.日影規制の具体的な調べ方とプランニングの注意点
    1. 3.1. まずは自分で確認!役所での用途地域と規制内容の調査方法
    2. 3.2. 専門家はこう見る!「日影図」の作成と読み解き方
    3. 3.3. ここに注意!測定面の高さと敷地の高低差が与える影響
    4. 3.4. 知っておくと役立つ日影規制の緩和措置
  4. 4.まとめ

これから家を建てようとお考えの方、あるいは不動産に関わる方であれば、「日影規制(にちえいきせい・ひかげきせい)」という言葉を一度は耳にしたことがあるかもしれません。「自分の建物が、将来にわたって近隣の日当たりを妨げないようにするためのルール」ということはご存知でも、「具体的に、いつの時期の日照を基準に、どのくらいの時間、制限がかかるのか?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

特に「日影規制 いつから」というキーワードは、多くの方が知りたいポイントです。 この記事では、日影規制の基本から、その核心である「いつから」適用されるのかという問題を、基準日、時間帯、法律の歴史という3つの視点から分かりやすく解説します。

らに、具体的な調査方法や設計時の注意点まで網羅することで、皆さまの家づくりや不動産取引における不安を解消するお手伝いをします。


1.日影規制とは?快適な住環境を守るための基本ルール


まずはじめに、日影規制の基本的な考え方についておさらいしましょう。なぜこのような規制が必要で、どのような建物や地域が対象となるのでしょうか。また、このルール自体はいつから存在するのか、その歴史的背景も見ていきます。


1.1. なぜ必要?日影規制の目的と概要


日影規制は、建築基準法第56条の2に定められた、建物を建てる際の高さに関する制限の一つです。その最大の目的は、中高層の建物によって周辺の敷地の日照が妨げられ、住環境が悪化することを防ぐことにあります。 マンションやビルなどが隣地に建つことで、一日中日が当たらなくなってしまった、という事態を避けるためのルールと考えると分かりやすいでしょう。

具体的には、一定規模以上の建物が、冬至の日を基準として、周辺の土地に一定時間以上の日影を落とさないように、建物の形や高さを工夫することが求められます。この規制があるおかげで、私たちは集合住宅や商業地域であっても、最低限の日当たりが確保された生活環境を享受できるのです。日影規制は、お互いの快適な暮らしを守るための、社会的な約束事とも言えます。


1.2. すべての建物が対象ではない?規制がかかる地域と建築物


日影規制は、日本全国すべての場所で、あらゆる建物に適用されるわけではありません。規制の対象となるのは、地方公共団体が条例によって指定する区域に限られます。具体的には、主に人々が暮らす住居系の用途地域や、商業地域、工業地域の一部が対象となります。 対象となる区域と、そこに建てられる建物の条件は以下の通りです。


対象区域と建物

  • 第1種・第2種低層住居専用地域、田園住居地域: 軒の高さが7mを超える建築物、または地階を除く階数が3以上の建築物。木造の場合は階数が3以上で規制対象となることが多いです。
  • 第1種・第2種中高層住居専用地域、第1種・第2種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、準工業地域: 高さが10mを超える建築物。これらの地域では、ある程度の高さの建物が建つことが想定されるため、10mを超えるものが規制対象となります。
  • 商業地域、工業地域、工業専用地域: 原則として日影規制の対象外です。ただし、地方公共団体が条例で指定すれば、高さが10mを超える建築物が対象となる場合があります。


このように、ご自身の土地がどの用途地域に属しているかによって、日影規制の対象となるかどうかが決まります。


1.3. 法律としての日影規制はいつから始まった?


日影規制という考え方そのものは、歴史的に日照権をめぐる争いの中で議論されてきましたが、現在の建築基準法に明確なルールとして盛り込まれたのは、比較的最近のことです。 具体的には、1976年(昭和51年)の建築基準法改正によって、日影規制(日影による中高層の建築物の高さの制限)が創設されました。

これが、法律として「日影規制はいつから」始まったか、という問いに対する答えになります。 この改正の背景には、高度経済成長期を経て都市部で中高層マンションの建設が急増し、日照をめぐる近隣トラブルが社会問題化したことがあります。

それまでは個別の訴訟で争われていた日照権の問題に、国が統一的な基準を設けることで、紛争の予防と良好な市街地環境の形成を図ろうとしたのです。この法改正以降、日影規制は日本の都市計画における重要な柱の一つとして機能しています。


2.日影規制は「いつから」適用されるのか?3つの視点で解説


ここからが本題です。多くの方が疑問に思う「日影規制はいつから適用されるのか」という問いについて、①基準となる日、②測定される時間帯、③規制される時間、という3つの具体的な視点から詳しく解説していきます。


2.1. 基準となる日:一年で最も影が長くなる「冬至日」


日影規制の計算で基準となるのは、「冬至日(とうじび)」です。冬至とは、北半球において一年で最も昼の時間が短く、太陽の南中高度が最も低くなる日のことを指します。太陽の位置が低いということは、同じ高さの建物でも、その影は一年で最も長くなるということです。

この最も厳しい条件である冬至日を基準に計算することで、それ以外の季節では確実に規制をクリアできる、という考え方に基づいています。つまり、日影規制は「夏至の日差しではなく、最も日当たりが悪くなる冬至の日を基準に考えます」というのが、一つ目の答えです。具体的に「いつからいつまで」という期間ではなく、「冬至の日」という一点をピンポイントで見て、建物の計画が適切かどうかを判断するのです。


2.2. 測定される時間帯:午前8時から午後4時までの間


日影規制では、一日中ずっと日影を落としてはいけない、というわけではありません。測定の対象となる時間帯が定められています。 建築基準法では、この時間帯を「午前8時から午後4時までの間」(北海道の一部地域では午前9時から午後3時まで)と定めています。そして、この時間帯の中で、各地方公共団体が条例によって、実際に規制を適用する時間を指定します。 例えば、東京都の場合、多くの地域で「午前8時から午後4時まで」の8時間すべてが対象時間帯として定められています。この時間帯は「真太陽時」で計算されるため、私たちが普段使っている時計の時刻とは若干のずれが生じることがあります。設計の際には、この真太陽時を考慮した正確な計算が必要不可欠です。


2.3. 規制される時間(日影時間):用途地域ごとに定められた許容範囲


最後に、具体的に「何時間までなら影を落として良いのか」という許容時間、いわゆる「日影時間」についてです。これは、建物を建てる土地の用途地域や、測定する地面の高さによって異なります。 敷地境界線から5mを超える範囲と10mを超える範囲の2つのラインで、それぞれ許容される日影時間が定められています。


規制内容の例(東京都の場合)

  • 第1種・第2種低層住居専用地域: 敷地境界線から5m~10mの範囲で3時間、10mを超える範囲で2時間の日影が許容される、といった具体的な規制があります。
  • 第1種・第2種中高層住居専用地域: 敷地境界線から5m~10mの範囲で5時間、10mを超える範囲で3時間の日影が許容される、など、低層住居専用地域よりも規制が緩やかになります。

これらの規制時間は、あくまで一例です。ご自身の土地に「いつから(何時から何時まで)」規制がかかり、合計で「何時間」まで許されるのかを知るためには、必ず所在地の役所が定める条例を確認する必要があります。

3.日影規制の具体的な調べ方とプランニングの注意点


日影規制の基本と、「いつから」適用されるのかが分かったところで、次は実際に自分の土地ではどうなっているのかを調べる方法と、家を建てる際の注意点について見ていきましょう。


3.1. まずは自分で確認!役所での用途地域と規制内容の調査方法


日影規制の内容を正確に知るための第一歩は、ご自身の土地がどの「用途地域」に指定されているかを確認し、その地域に適用される規制内容を調べることです。 この情報は、市区町村の役所の都市計画課や建築指導課といった担当窓口で確認できます。

窓口では、住所を伝えれば用途地域を教えてくれるほか、「建築計画概要書」などの閲覧や、日影規制に関する詳細な条例の内容が記載された資料を入手できます。最近では、多くの自治体がウェブサイト上で都市計画図を公開しており、インターネットで手軽に用途地域を調べることも可能です。ここで「日影規制の対象区域か」「対象となる建物の高さ」「規制時間」といった具体的な情報を必ず確認しましょう。


3.2. 専門家はこう見る!「日影図」の作成と読み解き方


用途地域と規制内容が判明したら、次は具体的な建物のプランが規制をクリアできるかを確認する作業に移ります。この際に用いられるのが「日影図(にちえいず・ひかげず)」です。 日影図とは、冬至の日を基準に、建物が周辺の土地にどのような影を落とすのかを時間ごとにシミュレーションし、地図上に描き出したものです。具体的には、以下の2種類の図が主に使われます。

  • 時刻日影図: 特定の時刻(例:午前9時、正午、午後3時など)にできる建物の影の形を示した図です。これにより、時間ごとの影の動きが分かります。
  • 等時間日影図: 同じ時間だけ日影になる範囲を線で結んだ図です。例えば「3時間日影線」の内側は、1日のうちに合計3時間以上の日影ができる範囲を示します。

この等時間日影図と、定められた規制ライン(敷地境界線から5m、10mのライン)を照らし合わせることで、規制をクリアできているかを判断します。日影図の作成には専門的な知識と専用のCADソフトが必要となるため、通常は設計を依頼する建築士やハウスメーカーが作成します。


3.3. ここに注意!測定面の高さと敷地の高低差が与える影響


日影の時間を測定する地面の高さ(測定水平面)も重要なポイントです。この高さは、建てる土地の用途地域によって、平均地盤面から1.5m、4m、6.5mなどと定められています。例えば、第1種低層住居専用地域では、1階の窓の中心あたりを想定した1.5mが一般的です。 ここで特に注意が必要なのが、自分の敷地と隣地の間に高低差がある場合です。

隣地が自分の敷地よりも低い場合、影はより遠くまで伸びるため、規制は厳しくなります。逆に隣地が高い場合は、規制は緩やかになります。建築基準法では、この高低差が1m以上ある場合、その高低差の1/2だけ高い(または低い)位置に平均地盤面があるものとみなして計算するルールが定められています。この「日影規制 地盤面 高低差」の扱いは複雑なため、専門家による正確な測量と計算が不可欠です。


3.4. 知っておくと役立つ日影規制の緩和措置


厳しい印象のある日影規制ですが、一定の条件下では規制が緩和されるケースもあります。これを知っておくことで、より自由度の高いプランニングが可能になるかもしれません。 主な緩和措置としては、以下のようなものがあります。


敷地が2つ以上の道路に接する場合の緩和: 敷地が広い道路に面しているなど、開放性が高い場合に適用されることがあります。
建築物が隣地の境界線から後退している場合の緩和: 建物を敷地境界線から離して建てることで、隣地への影響が少ないと判断され、規制が緩和されることがあります。
対象区域外に日影が落ちる場合の緩和: 建物の影が、日影規制の対象区域外(例えば商業地域や道路、川など)に落ちる部分については、日影時間の計算に含めなくてよいとされています。

これらの緩和措置を有効に活用できるかどうかは、敷地の条件や建物の計画によって異なります。設計の初期段階で、建築士とよく相談することが重要です。


4.まとめ


今回は、家づくりや不動産に関わる上で避けては通れない「日影規制」について、多くの方が抱く「いつから」という疑問を中心にお答えしてきました。 最後に、この記事の重要なポイントを振り返ります。

  • 法律の始まりは「1976年(昭和51年)」: 近隣の日照権トラブルを背景に、建築基準法に導入されました。
  • 基準日は「冬至日」: 一年で最も影が長くなる、一番厳しい条件で計算します。
  • 測定時間帯は「午前8時~午後4時」が基本: この時間帯の中で、地域ごとに定められた時間、日影を制限します。
  • 規制内容は「用途地域」で決まる: まずはご自身の土地の用途地域を調べることが第一歩です。
  • 確認には「日影図」が不可欠: 専門家による正確なシミュレーションで、規制をクリアできるかを確認します。


「日影規制 いつから」という問いは、法律の歴史、計算の基準日、そして一日のうちの測定時間帯という、複数の意味合いを持っています。これらの点を正しく理解することは、トラブルを未然に防ぎ、近隣と良好な関係を築きながら、理想の建物を実現するために非常に重要です。日影規制は単なる制約ではなく、すべての人が快適な住環境を享受するための知恵でもあります。ぜひ本記事の情報を、皆さまのプロジェクトにお役立てください。

つくるAI株式会社 編集部
つくるAI株式会社 編集部
2024年7月、トグルホールディングス株式会社より分社化した「つくるAI株式会社」のメディア編集部。デベロッパー様が土地をもっと買えるようになり、売買仲介様の物件の価値の判断がより正確になるツールを提供しています。

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