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【2025年版】天空率計算ソフト比較!選び方とおすすめ5選

建築設計における天空率計算は、単なる法規チェックの一環に留まらず、建築物のデザインや事業性を根幹から左右する極めて重要なプロセスです。かつては膨大な時間を要したこの計算も、専用の天空率計算ソフトを導入することで、業務効率を飛躍的に向上させ、より複雑で創造的な建築計画の検討を可能にします。

しかし、市場にはBIM連携に特化した高機能な製品から、コストパフォーマンスに優れたものまで、多種多様なソフトウェアが溢れており、「自社の設計フローに最適なソフトはどれか」「価格や機能、サポート体制をどう比較すれば良いのか」といった悩みを抱える設計者の方は少なくありません。

本記事では、天空率計算ソフトを選定する上での基本的な考え方から、現在主流となっている主要ソフト5選の機能や特徴の徹底比較、さらには導入後の運用に関する具体的なQ&Aまで、専門的な視点から網羅的に解説します。この記事を最後までお読みいただければ、貴社の業務効率化と設計品質の向上に大きく貢献する、最適な一品がきっと見つかるはずです。

1. そもそも天空率計算とは?ソフト導入のメリットを再確認

数ある天空率計算ソフトの具体的な比較に入る前に、まずは天空率制度そのものの本質と、なぜ現代の建築設計においてソフトウェアの導入が不可欠とされているのか、その基本と導入メリットを改めて深く掘り下げてみましょう。この基礎知識をしっかりと理解することが、後々のソフト選びにおいて、自社のニーズに合致した的確な判断を下すための重要な羅針盤となります。

1.1. 天空率制度の基本概要

天空率制度とは、建築基準法に定められた高さ制限(道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限)に対する緩和規定の一つです。従来の画一的な斜線制限が、敷地境界線からの距離に応じて建物の高さを一律にカットする「断面規定」であったのに対し、天空率制度は、敷地の周辺環境における開放感を確保するという観点から、より三次元的かつ合理的に建築物の形態を評価する「空間規定」と言えます。

具体的には、道路や隣地の所定の測定ポイントから空を見上げた際に、計画する建物によって空が遮られる割合(天空率)を算出します。そして、その値が、従来の斜線制限に適合させた仮想の建物(適合建築物)を建てた場合の天空率以上であれば、斜線制限の適用が免除されるという仕組みです。

この制度を有効に活用することで、例えば、建物をセットバックさせて生まれた上部空間を有効活用し、斜線制限を超える高さの塔屋を設けたり、不整形な敷地形状のポテンシャルを最大限に引き出したりと、採光や通風といった住環境の質を維持しながら、建築デザインの自由度を格段に高めることが可能になるのです。

単に規制をクリアするだけでなく、より付加価値の高い建築空間を創出するための積極的な設計手法として、現代の建築計画に不可欠な制度となっています。

1.2. 手計算とソフト計算の決定的な違い

天空率の計算は、三斜求積法などを用いて天空図を作成し、その面積比を算出するというプロセスを辿るため、理論上は手計算でも行うことが可能です。しかし、実際の設計業務で扱う建物は、バルコニーや庇、複雑な屋根形状など、単純な矩形ではない要素を数多く含みます。

これらの複雑な形状を複数の測定ポイントごとに正確に図化し、面積を算出する作業は、膨大な時間と極度の集中力を要するだけでなく、ヒューマンエラーが発生するリスクを常に内包します。計算ミスは、設計の手戻りはもちろん、確認申請の遅延や、最悪の場合は是正工事といった深刻な事態を招きかねません。

一方、天空率計算ソフトを利用すれば、これらの課題は劇的に解消されます。CADやBIMで作成した3Dモデルデータを直接インポートし、必要な設定を行うだけで、ソフトウェアが瞬時に、かつ寸分の狂いもなく正確な計算を実行します。さらに、計算根拠となる天空図や三斜求積図、面積表といった申請に必要な図書一式も自動で生成してくれるため、作図の手間も大幅に削減できます。

この圧倒的な「正確性」、計算や修正にかかる時間を劇的に短縮する「スピード」、そして多様なプランを気軽に試せる「検証の手軽さ」こそが、手計算とソフト計算を分ける決定的な違いであり、現代の設計業務においてソフトウェアの活用が標準となっている根源的な理由なのです。

1.3. ソフト導入で実現する設計の高度化

天空率計算ソフトは、単に確認申請業務を効率化するためのツールという側面に留まりません。その真価は、むしろ設計プロセスのより上流、つまり企画設計や基本設計の段階でこそ発揮されると言えるでしょう。

多くの高機能ソフトに搭載されている「逆天空計算(逆日影計算)」機能は、その象徴です。この機能を用いれば、与えられた敷地条件と法規制の中で、建築可能な最大のボリューム(最大空間)を自動的に算出してくれます。これにより、設計の初期段階で事業性を最大化するプランニングを迅速に行うことができ、クライアントへの説得力のある提案も格段にしやすくなります。

また、建物形状を少し変更した場合に天空率がどう変化するかをリアルタイムでシミュレーションできるため、デザイナーは法規の制約を常に意識しながら、デザインと法規遵守の両立に向けた緻密なスタディを、時間的な制約を気にすることなく、満足いくまで繰り返すことが可能です。

このように、天空率計算ソフトは単なる計算機ではなく、設計者の創造性を解き放ち、より付加価値の高い建築計画を実現するための強力なパートナーとして機能するのです。法規という制約を、創造性を刺激するポジティブな要素へと転換させる可能性を秘めています。

2. 【目的別】天空率計算ソフトを選ぶための5つの比較ポイント

自社の業務内容や設計環境に真に最適な天空率計算ソフトを見つけ出すためには、いくつかの重要な比較ポイントを多角的に検討する必要があります。ここでは、導入後に「こんなはずではなかった」というミスマッチを防ぎ、投資効果を最大化するための5つの具体的な視点を詳しく解説します。

2.1. 対応CAD・BIMソフトとの連携性

最も優先して確認すべき比較ポイントは、現在社内で主軸として使用している設計ツール(CADやBIMソフト)とのデータ連携の親和性です。設計ワークフローの途中でデータの変換や再入力といった非効率な作業が発生すると、せっかくソフトを導入しても期待したほどの生産性向上は見込めません。

例えば、Jw_cadをメインで利用している設計事務所であれば、JWW形式のデータを直接読み込んでスムーズに天空率計算へ移行できるソフトが理想的です。一方、RevitやArchiCADといったBIMソフトを主体とする組織では、BIMモデルが持つ3D形状や属性情報を余すことなく活用できる専用の連携プラグインが提供されているソフトを選ぶべきでしょう。

この直接連携により、設計変更が即座に計算モデルに反映されるため、BIMのメリットを最大限に享受できます。DXFやDWGといった中間ファイルを介した連携も可能ですが、その場合はレイヤー構造や3D情報の互換性が完全に保たれるか、事前に体験版などで入念に検証することが、スムーズな業務フローを構築する上で不可欠な鍵となります。連携のスムーズさは、日々の業務効率に直結する最重要項目と認識しましょう。

2.2. 価格体系(買い切りかサブスクか)

ソフトウェアのライセンス費用は、大きく分けて初期に一括で支払う「買い切り型(パーマネントライセンス)」と、月額または年額で利用料を支払う「サブスクリプション型」の2種類が存在します。それぞれの特徴を理解し、自社の財務状況や運用方針に合った選択をすることが重要です。

買い切り型: 初期投資は高額になる傾向がありますが、一度購入すれば永続的にソフトウェアを使用する権利を得られます。法改正などに対応するためのメジャーアップデートには別途費用が発生することが多いものの、長期的に見れば総所有コスト(TCO)を抑えられる可能性があります。資産として計上できる点も特徴です。安定した経営基盤を持ち、長期間にわたって同じツールを使い続けることを想定している企業に適しています。

サブスクリプション型: 初期費用を大幅に抑えて導入できる点が最大のメリットです。利用料金には常に最新バージョンへのアップデートやテクニカルサポートが含まれていることがほとんどで、法改正にも迅速に対応できる安心感があります。利用期間やライセンス数を柔軟に変更できるため、プロジェクト単位での利用や、事業規模が変動しやすいスタートアップ企業などにとって合理的な選択肢と言えるでしょう。

どちらの価格体系が自社にとって最適か、短期的なキャッシュフローと長期的なコスト、そして法改正への対応方針といった複数の観点から慎重に比較検討することが求められます。

2.3. 機能の豊富さ(逆天空・日影計算など)

天空率計算ソフトには、中核となる計算機能に加えて、設計業務を多角的に支援する様々な付加機能が搭載されています。代表的なものとして、日影規制をクリアしているかを確認する「日影計算」、高さ制限を三次元的に可視化する「斜線チェック」、そして前述した建築可能な最大ボリュームを算出する「逆天空計算」などが挙げられます。

これらの機能がすべて自社に必要とは限りません。まずは、自社の主な業務内容(意匠設計が中心か、確認申請業務が多いか、土地活用のボリュームスタディが主戦場かなど)を明確に分析し、どの機能が「必須」で、どの機能が「あれば便利」かを整理することが肝要です。

一般的に、多機能なソフトほど価格も高くなるため、使わない機能のために余計なコストを支払う「オーバースペック」な状態は避けたいところです。自社のニーズを正確に把握し、機能とコストのバランスが取れたソフトウェアを選ぶという視点が、賢明なソフト比較には不可欠です。必要な機能を過不足なく備えたツールこそが、最もコストパフォーマンスの高い選択となります。

2.4. 操作性とサポート体制

どれだけ高機能なソフトウェアであっても、操作が複雑で習得に時間がかかるようでは、日々の業務でストレスなく使いこなすことはできません。毎日使うツールだからこそ、直感的で分かりやすいユーザーインターフェースを備えているか、という操作性は極めて重要な選定基準です。

幸い、多くのソフトウェアメーカーは無料の体験版やオンラインでのデモンストレーションを提供しています。導入を最終決定する前に、これらの機会を必ず活用し、できれば複数の担当者で実際に操作感を試してみることを強く推奨します。マニュアルを読まなくても基本的な操作ができるか、設定項目が論理的に配置されているかなどをチェックしましょう。

また、導入後に発生しうる技術的なトラブルや操作上の疑問点に対して、迅速かつ的確に対応してくれるサポート体制の充実度も事前に確認すべき重要なポイントです。電話やメールでの問い合わせ窓口の有無、オンラインマニュアルやFAQコンテンツの充実度、定期的なトレーニングや講習会の開催状況など、どのようなサポートが受けられるかを具体的にチェックしておくことで、導入後も安心してソフトウェアを運用していくことができます。

2.5. 無料(フリーソフト)の選択肢と注意点

初期投資を一切かけずに天空率計算を行いたい場合、インターネット上で公開されている無料のフリーソフトも選択肢の一つとして考えられます。比較的単純な形状の小規模な建築物であれば、これらのソフトでも基本的な計算は可能かもしれません。しかし、プロフェッショナルな設計業務で利用するには、看過できないいくつかの注意点とリスクが存在します。

まず、多くのフリーソフトは機能が限定的であり、複雑な建物形状の計算や、そのまま確認申請に提出できる品質の図書作成には対応していないケースがほとんどです。また、開発者による公式なサポートは期待できず、万が一トラブルが発生した際はすべて自己責任で解決しなければなりません。さらに、建築基準法などの重要な法改正に迅速に追従されない可能性や、そもそも商用利用がライセンス規約で禁止されている場合もあります。

業務の正確性、信頼性、そしてコンプライアンスが厳しく求められるプロの現場においては、これらのリスクを十分に理解した上で、信頼できる有料ソフトの導入を基本線として比較検討することが賢明な判断と言えるでしょう。安易な選択が、結果的に大きな手戻りや信用の失墜に繋がる可能性を忘れてはなりません。

3. 【2025年最新】主要な天空率計算ソフト5選を徹底比較

ここでは、国内の建築設計業界で広く採用され、多くの実績を持つ主要な天空率計算ソフトを5つ厳選し、それぞれの際立った特徴や強み、そしてどのようなユーザーに適しているのかを徹底的に比較・解説します。自社の設計環境や業務の特性、将来的なビジョンに最もマッチするソフトウェアはどれか、じっくりと見極めていきましょう。

3.1. 【BIM連携の王道】ADS-win / ADS-BT for Revit

生活産業研究所が開発・提供する「ADSシリーズ」は、天空率・日影計算ソフトの分野において、長年の実績と圧倒的なシェアを誇る業界のデファクトスタンダードです。その最大の強みは、BIMソフトとの卓越した連携機能にあります。

特に、Autodesk Revit専用のアドイン版として提供される「ADS-BT for Revit」は、Revit上で作成したBIMモデルの情報をダイレクトに活用し、設計と法規チェックのプロセスをシームレスに統合します。これにより、設計変更が即座に天空率計算に反映されるなど、BIMを主体とする設計事務所のワークフローを劇的に効率化します。

JCBA(日本建築行政会議)方式に完全準拠した信頼性の高い計算エンジンを搭載し、超高層ビルや大規模複合施設といった複雑なプロジェクトにも余裕で対応できる機能性は、多くの組織設計事務所やゼネコンから絶大な支持を集めています。価格帯は比較的高価ですが、BIMワークフローの生産性を極限まで高め、設計品質の向上を最優先に考える組織にとって、これ以上ないほど有力な選択肢となるでしょう。まさに、BIM時代の天空率計算ソフトの王道と言える存在です。

3.2. 【高機能・多機能】天空率・日影・斜線計算(J-BIM)

福井コンピュータアーキテクト社が提供する「J-BIM 天空率・日影・斜線計算」は、その製品名が示す通り、天空率計算に留まらず、日影計算や各種斜線チェックなど、建築基準法の集団規定に関わる法規チェックを包括的に行えるオールインワン・ソフトウェアです。

同社が開発する純国産BIMソフト「GLOOBE」との親和性が極めて高く、両者を組み合わせることで、企画設計から実施設計、法規チェック、そして確認申請図書の作成までを、一気通貫のスムーズなワークフローで完結させることが可能です。特に、建物の最大ボリュームを検討する逆天空計算や、時刻日影・等時間日影といった高度な日影シミュレーション機能も充実しており、設計の初期段階から法的制約とデザインの可能性を深く、かつ詳細に検討したい場合に非常に強力なツールとなります。

一つのソフトウェアで複数の法規チェックを完結させたいと考えるユーザーや、GLOOBEをメインのBIMツールとして活用している企業に最適なソリューションです。多角的な法規検討を効率的に行いたい場合に、その真価を発揮します。

3.3. 【Jw_cadユーザー向け】Jww天空率・日影計算

「Jww天空率・日影計算」は、日本の建築設計業界で依然として圧倒的なシェアを持つ無償の2D CAD「Jw_cad」との連携に特化して開発されたソフトウェアです。多くの設計者が慣れ親しんだJw_cadで作成した平面図や立面図のデータ(JWW形式)をダイレクトに読み込み、非常にシンプルで直感的な操作で天空率や日影の計算を実行できる点が最大の魅力です。

高価なBIMソフトを導入することなく、既存のJw_cad中心の設計ワークフローを大きく変更せずに、煩雑な法規チェック業務を効率化できるため、特に中小規模の設計事務所やアトリエ事務所から高い評価を得ています。機能は天空率と日影計算に絞り込まれている分、導入コストを抑えられるコストパフォーマンスの高さも大きなメリットです。

長年Jw_cadを愛用してきた企業が、初めて天空率計算ソフトを導入する際の、最も現実的で導入しやすい選択肢と言えるでしょう。既存の資産を活かしながら、スムーズにデジタル化への第一歩を踏み出せます。

3.4. 【コスト重視派に】A's(エース)

エーアンドエー社が開発する「A's(エース)」は、天空率計算、日影計算、斜線・逆斜線計算といった法規チェックに求められる基本的な機能をしっかりと網羅しながらも、比較的リーズナブルな価格設定を実現している、コストパフォーマンスに優れたソフトウェアです。

特に、デザイン性の高い建築設計で世界的に人気の高いCADソフト「Vectorworks」とのデータ連携機能が高く評価されており、Vectorworksで作成した3Dモデルをスムーズに取り込んで法規チェックを行うことができます。ユーザーインターフェースもシンプルで分かりやすく設計されているため、専門的な知識がなくても直感的に操作でき、習得にかかる時間も比較的短いとされています。

初期投資を抑えつつも、信頼性の高い法規チェックツールを導入したいと考えている設計事務所や、デザインワークの中心にVectorworksを据えているユーザーにとって、非常に魅力的な候補となるソフトウェアです。機能と価格のバランスを重視するなら、必ず比較検討に加えたい一品です。

3.5. 【特定条件下で活躍】各種CADのアドオン・プラグイン

これまで紹介してきたような単体で動作する専門ソフトとは別に、特定のCADソフトウェアに機能を追加する「アドオン」や「プラグイン」という形態で提供される天空率計算ツールも存在します。例えば、Autodesk社の「AutoCAD Architecture」やグラフィソフト社の「ArchiCAD」には、標準機能や追加アドオンとして、マスモデルから簡易的に斜線や日影を検討する機能が含まれています。

これらのツールの最大の利点は、普段から使い慣れたCADの操作画面内で作業が完結するため、新たなソフトの操作を覚える手間なく、手軽に導入できる点です。ただし、その多くは機能が限定的であり、詳細な計算設定やJCBA方式に準拠した申請図書の作成には対応していない場合が少なくありません。

そのため、設計の超初期段階における簡易的なボリュームチェックや、デザインの方向性を探るためのスタディツールとして、目的を限定して利用する場合に有効な選択肢となります。本格的な天空率計算ソフトと比較する際は、その機能範囲を正確に理解しておくことが重要です。

4. 天空率計算ソフト導入後のよくある質問(Q&A)

最後に、天空率計算ソフトの導入を具体的に検討する段階で、多くの担当者様が抱くであろう実務的な疑問点について、Q&A形式で分かりやすくお答えします。

4.1. 導入までどのくらいの期間がかかりますか?

ソフトウェアの導入プロセスは、単に購入してインストールすれば完了というわけではありません。一般的には、「情報収集・複数ソフトの比較検討」から始まり、「メーカーへの問い合わせ・デモンストレーションの体験」、「見積もりの取得と社内稟議」、「契約手続き」、「インストールと環境設定」、そして「担当者への操作トレーニング」といった一連のステップを踏むことになります。

この全工程にかかる期間は、企業の規模や意思決定のスピード、担当者の習熟度によって変動しますが、おおよその目安として数週間から1ヶ月半程度を見ておくとよいでしょう。特に、複数のソフトの体験版をダウンロードし、実際のプロジェクトに近いデータを用いてじっくりと操作性や機能性を比較検証する期間を十分に設けることが、導入後の成功を左右する重要なポイントです。

導入を急ぐあまり、自社のワークフローに合わないソフトを選んでしまうと、かえって業務効率が低下する本末転倒な結果にもなりかねないため、スケジュールには余裕を持って計画的に進めることを強くおすすめします。

4.2. 計算結果はそのまま確認申請に使えますか?

はい、本記事で紹介したような主要な有料天空率計算ソフトが出力する計算書や各種図面(天空図、三斜求積図、位置図など)は、建築確認申請の添付資料として、そのまま使用できる品質と信頼性を備えています。

その信頼性を担保する上で極めて重要なのが、「JCBA方式」に準拠しているかどうかという点です。JCBA(一般財団法人日本建築行政会議)が定めた天空率の運用基準は、全国の多くの特定行政庁で審査の標準的な拠り所として採用されており、この方式に準拠した計算結果は、審査機関から高い信頼を得ることができます。

ただし、ごく稀に自治体によっては独自の解釈や追加資料の提出を求められるケースも存在します。そのため、ソフトウェアがJCBA方式に準拠していることを確認した上で、念のため、最終的には提出先の行政窓口や指定確認検査機関に、どのような形式の資料が必要か事前に問い合わせておくと、より万全の体制で、スムーズに申請手続きを進めることが可能になります。この一手間が、後の手戻りを防ぐことに繋がります。

4.3. 複数人でのデータ共有は可能ですか?

チーム単位で設計業務を進める現代の設計事務所において、データの共有と共同作業の効率性は非常に重要です。天空率計算ソフトのライセンス形態には、主に特定の1台のPCにのみインストールして使用できる「スタンドアロンライセンス」と、社内のネットワークサーバー上でライセンスを管理し、複数のPCでライセンスを共有利用できる「ネットワークライセンス」があります。

複数の設計者が同時に、あるいは頻繁にソフトウェアを使用する可能性がある場合は、初期費用は高くなりますが、運用効率の高いネットワークライセンスを選択するのが合理的です。また、作成した天空率の計算データ自体は、社内のファイルサーバーや、Dropbox、Google Driveといったクラウドストレージサービスを利用して共有するのが一般的です。

さらに、Revit ServerやBIMcloudといったBIMサーバーを導入し、BIMモデルを中心としたデータ管理を行うことで、設計変更から法規チェックまで、より高度で円滑な情報共有とコラボレーションを実現できます。自社の働き方に合ったライセンスとデータ共有の方法を比較検討することが大切です。

まとめ

本記事では、天空率計算ソフトを選ぶ上で欠かせない比較ポイントから、国内で広く利用されている主要なソフトウェア5選の具体的な特徴、そして導入に際して生じる疑問点まで、多角的な視点から詳しく解説しました。

最適な一品を導入するための成功の鍵は、まず自社の現状とニーズを正確に把握することから始まります。現在、設計ワークフローの中心にあるCAD・BIMソフトは何か、確保できる予算はどのくらいか、天空率計算以外に日影計算や逆天空計算といった高度な機能は本当に必要か。これらの要素を一つひとつ明確にすることで、無数にある選択肢の中から、自社にとって本当に価値のあるソフトウェアを効率的に絞り込むことができるでしょう。

そして、候補となるソフトウェアが見つかったならば、必ず無料の体験版を試用したり、開発元が実施するオンラインデモンストレーションに参加したりして、その実際の操作性を自身の目で確かめてください。日々の業務で長時間向き合うツールだからこそ、カタログスペック上の機能の豊富さだけでなく、設計者がストレスなく直感的に使えるかどうかという「使用感」が、長期的な生産性を大きく左右します。

適切な天空率計算ソフトは、設計者を煩雑で時間のかかる計算業務から解放し、より創造的で本質的な設計活動に集中するための貴重な時間と環境を生み出してくれます。本記事が、貴社の設計業務を次のステージへと加速させる、最適なパートナー選びの一助となれば幸いです。


つくるAI株式会社 編集部
つくるAI株式会社 編集部
2024年7月、トグルホールディングス株式会社より分社化した「つくるAI株式会社」のメディア編集部。デベロッパー様が土地をもっと買えるようになり、売買仲介様の物件の価値の判断がより正確になるツールを提供しています。

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